2016-01-15

思い出の桜

2桜
数日 桜が頭の中から消えない。

師走に届いた桜が 大晦日を待ってほころび始めた時は
ただただ心浮き立つ想いがした。
その桜を思い出した訳ではない。

春の陽射しの中 優しい色で咲き始めた桜
ようやく満開になったのにそぼ降る雨に濡れる桜
吹雪のように一面を染めながら散る桜

5歳の春、2階にあった自室の窓から
眺めていた大きな桜の木がずっと頭の中にある。

5歳の春、わたしは初めて人前で話をすることになった。
卒園生代表としての挨拶をすることになった。

「冷たい風もやみ あたたかい春がやってきました。」
で始まる数分のスピーチを大きな桜の木を眺めながら
繰り返し繰り返し練習した。

まだ花をつけぬ桜の木を眺めていたのに
たった5年の記憶の中にあるさまざまな表情の桜が
目に浮かぶような気がしていた。

言い淀む事なく スラスラ言葉が出てくるときは
優しく咲き誇る桜や桜吹雪の喝采が浮かび
同じところを何度も何度も間違えて最初からやり直す時は
雨に濡れ悲しそうに散っていく桜になる。

その時の記憶はスピーチの文面を覚えている以上に鮮明で
今でも折々にその記憶が蘇る。

正しいかどうかはわからないが 
わたしなりにいつも以上に頑張り、ベストを尽くしている時だ
と今日初めて気がついた。

人は思い出に支えらえることがある。

 

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