日本文化

尺差しにこめられたもの

書くことにしか自信がなく、裏打ちから全て表装の専門家にお任せしている。
時々、自分でもやってみたいと手がウズウズしてしまい、挑戦しては不器用さを思い知る。

今日も表具師の技を間近で見せていただき、懲りもせずまたウズウズしてしまった。

刷毛を優しく扱う姿は、扇子を手に日本舞踊を舞うような美しい手さばき。
和紙をそっと引き上げ、パッと手放す仕草は魔法使いのようでもあり。

生麩糊(しょうふのり)、楮紙(こうぞがみ)、薄美濃紙(うすみのがみ)、美栖紙(みすがみ)、宇陀紙(うだがみ)。
材料の名前を耳にするだけで、奈良・平安時代にタイムスリップしたような気分になり奈良・平安時代から続く表装の歴史を感じる。

定木や尺差しを優雅に使いこなす姿に見とれていると
「この尺差しは60年前のもの」(写真左)
ボソッと尺差しを見せてくださった。
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あめ色に変化した美しい尺差しを手に取ると、手に馴染むしなやかさとびくともしない強靭さを感じる。
現代のものと比べると、薄さと目盛り線の細さの美しさが歴然。

厚みがあればある程、誤差がでる。限界まで薄くしているのに竹の強さは残っている。
目盛りの線は誤差とは呼べない程でも、限界まで細くして誤差を縮めている。
少しでも薄くして、少しでも目盛り線を細くして、使う人ができるだけ誤差のないように。

そこに職人の思いやりと心意気を感じて、惚れ惚れ見惚れていた。
想いがこもっているものには魂が宿り、魂こもったものは美しい。

2015-09-05 | Posted in 日本文化No Comments » 
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